中古物件を検討する際にどうしても心配になってしまうのが「欠陥住宅」ではないかということですよね。
2018年に宅建業法が改正され、建物状況調査についての規定が設けられました。
現在の日本では中古住宅の流通が少なく、築年数が経過した建物にはあまり価値がありません。
そこで建物状況調査を行うことで建物の性能を確認し、安心して取引できる中古住宅の流通を促進する狙いがあり宅建業法が改正されました。
(※このブログでは国土交通省のホームページに公開されている重要事項説明の様式例を元に解説をします。不動産会社の使用する書式の様式によって若干違いますが法律で定められている重要事項説明の内容は同じです。)
宅建業法改定の概要
内容は大きく分けて3点です。
媒介契約締結時
まずは媒介契約締結時に売主に対して建物状況調査を実施する業者の斡旋の可否を示し、売主が希望すれば斡旋する事が必要となりました。
これは不動産業者が売主から売却の依頼をいただく際に媒介契約というものを締結する際の規定です。
重要事項説明時
次に、宅建業者が重要事項説明をする際の説明事項として建物状況調査の実施の有無が追加されました。
実施していれば建物状況調査の結果の概要という書面を公布し、説明する必要があります。
実施がなければ実施なしと説明しなければなりません。
売買契約締結時
建物状況調査を実施た場合、建物状況調査の結果の概要について説明されます。
そこで確認した内容を37条書面(契約書)に「当事者の双方が確認した事項」として記載されることになります。
建物状況調査”有”の場合
建物状況調査が実施された場合は、建物状況調査の結果の概要という調査対象部位ごとの現況や劣化状況等の有無などが記載された書面が交付され、宅地建物取引士より重要事項説明の際に説明されます。
気をつけなければならないのは建物状況調査は建物の瑕疵(不具合)が無いことを保証するものではなく、建物の現在の状況を確認して説明するものです。
建物状況調査”無”の場合
その場合には状況調査無と記載されます。
建物状況調査は義務では無いのか
現時点では売主による建物状況調査は義務化されていません。
義務化されているのは宅建業者による実施の有無の説明です。
建物状況調査によるメリットデメリット
メリット
建物の専門家による建物状況調査を行うことで、その時点の住宅の状況を把握し、購入すかを決めたり、購入後のリフォームの必要性の判断や、金額の目安を把握する事ができます。また、不具合がある場合には対応することを鑑みて売買価格を減額交渉できたりするかもしれません。
売買契約に関しても売主・買主が安心して取引を円滑に進めることができます。契約をしている間に不具合が見つかった場合はその対応が必要不可欠です。
売買金額で折り合いをつけるのか、最悪の場合契約の解除やそれに伴う損害賠償請求などの可能性も出てきます。
購入後に瑕疵(不具合)が見つかると補修の為の思わぬ出費や、売主との不具合の補修の負担に関するトラブルなどを未然に防ぐことができます。(瑕疵担保免責の場合には泣き寝入りになることも)
さらに、建物状況調査の結果不具合が発見されず、かつ一定の基準を満たす住宅は、引渡後に瑕疵(不具合)が発見された場合に、保証が受けられる住宅瑕疵保証を利用することができます。
デメリット
しかしデメリットもあります。
建物状況調査は建物の基礎、外壁等に生じているひび割れや雨漏り等の劣化事象・不具合事象の状況を目視、計測等により調査をします。
壁をめくったり、コンクリート強度を調査するために穴を開ける(コア抜き)などの破壊検査は行われません。
また、給排水管や構造部分の専門的な調査を希望する場合は有料のオプション調査になる事がほとんどです。
居住中の建物で必要な調査箇所が見れなかったり、屋根裏や床下の点検口がないなどで、目視確認できない部分があると報告書には「調査できなかった」と記載されます。
費用と時間の面でもデメリットがあります。
基本的に調査を依頼した人が調査費用を負担するので、売主が調査をしなかったり、買主側で調査を希望する場合には、売主に事前に許可を得る必要があります。
しかし建物状況調査を実施する際には時間が掛かります。
購入申込から建物状況調査をするとその間売却の募集がストップしますし、調査の結果購入申込をキャンセルされるかもしれないため売主が協力をしないケース(または建物状況調査不要で購入する買主を優先する)もあります。
建物状況調査が定着すれば安心して契約できる物件が増える
不動産取引の現状としては建物状況調査を事前に行っている物件はまだ少いように感じます。
これから建物状況調査が当たり前になれば安心して契約できる物件が増えます。
中古物件の購入を検討する際には建物状況調査実施の有無確認をしましょう。